大きな声では言えない歯磨き粉の秘密教えます22024.10.15 入歯師 山崎 敦史

こんにちは、やまざき歯科クリニック院長の山崎です。

以前歯磨き粉の裏話をさせていただきました。
皆さんはパッケージの裏をチェックするようになりましたでしょうか。
薬局・ドラックストアでどのメーカーがいいのか熟考して選んでいることかと思います。

しかしです、1つ残念なお知らせがあります。
実は、歯磨き粉はある特定の一社のOEM製品によって寡占状態なのです。
売ってる会社と、作ってる会社は別なことが多い業界です。
あなたがどれだけ一生懸命選んでも結局同じ工場で作られたものなんてことが多々あります。

その会社はズバリ、【日本ゼトック】といいます。

薬のプロである製薬会社の歯磨き粉や、歯科専門メーカの歯磨き粉であっても、製造は自社では作らずこの会社のOEM製であったりします。

良い話もあります。
安心してください日本ゼトックは優秀な会社です。私自身が使いたいと思える歯磨き粉も作ってます。当院で取り扱っている歯磨き粉もこの会社のものが何個かあります。

薬のノウハウや知識と、歯磨き粉としてペースト状にする技術や、ペーストの中で成分を安定させる技術は別のようです。
自社で新たにペーストを開発するより、【餅は餅屋】でプロに任せた方がいいこともあります。

ただし同じ会社が請け負っているので、名前と販売元が違うだけで似たり寄ったりの個性のない商品になってしまうことも正直あります。

ダイハツのロッキーとトヨタのライズ
スバルのBRZとトヨタの86

など、車であれば名前と見た目は重要な要素だと思います。
(車に詳しい方には、中身も違うぞと怒られるかもしれませんが)

しかし歯磨き粉の場合、中身が同じなら名前とパッケージに意味はないと思いませんか?
ですが、名前とパッケージで売れてしまうのが悲しいかな日本の消費者なのです。

最近お騒がせの小林製薬さんは、効果効能をそのまま商品名にしてしまうという戦略で売り上げを拡大しました。
難解なカタカナの名前が主流であった製薬会界に、わかりやすさで風穴を開けました。
ネーミングは薬機法(昔の薬事法)の外にあるので、そこに気が付いた小林製薬のプロモーションチームは天才だと思います。

実例を挙げると角が立つので、例え話をします。
歯磨き粉で、「魔法のように白くなります」と効能を書くことはアウトですが、商品名を「ホワイトマジック」とすることはセーフとなります。
「魔法のように白くなる」イメージを本当に白くなると消費者が勝手に誤認しているだけという理屈です。
小林製薬風に名前を付けるなら、「シロクナール」「キバミトレール」などになるでしょうか。

余談になりますが洗濯洗剤で「驚きの白さへ」のコピーがありますが「驚き」は人それぞれで客観性はないので何とでも言えます。

他にも【世界初】【日本初】【史上最高】【売り上げNO.1】【東大が○○】などの文言にも注意が必要です。

よく読むと、※印の注意書きに、「家庭用のジェル状歯磨き粉のにおいて」「50㎎の小型チューブにおいて」「当社史上」「発売1か月間の売り上げデータにおける」「某通販サイト週間ランキング」「東大卒の当社社員が・・・」など但し書きが書いてあります。
ニッチな世界でNO.1を目指すことはビジネスにおいて有効な手段ですが、あまりにもニッチを狙いすぎていると思わず「どこの1番だよ!」と突っ込みたくなります。

改めて言います。
名前と見た目に惑わされずに、成分表をよく見ましょう。

新製品が出ると、私は商品ホームページでチェックするようにしていますが、中には既視感(デジャヴ)を覚えることがあります。
有効成分に対する効能の表現が同じであったり、イメージ図も使い回しであったりすると、改めて使ってみようとは思いません。

製造会社が主導で商品が作られた場合、無難な歯磨き粉に落ち着く傾向があります。
香味料と香料、着色料が違うだけで、中身は一緒な歯磨き粉が出来上がります。

一方販売元の持ち込み企画のものは、こういう歯磨き粉にしたいといった強い意志を感じます。コンセプトもとがっています。
良くも悪くも1度は試してみようかなと思えるものが多くあります。

その商品がどちらの主導よって企画されたかによって、出来上がりの歯磨き粉の存在意義にかかわってくるように思います。

もう一度言います。
名前と見た目に惑わされずに、成分表をよく見ましょう。
以下に、成分のポイントを示します、参考にしてください。

【薬用成分】(有効成分):医薬品や医薬部外品に入っています
【殺菌剤】虫歯菌や歯周病菌を標的にして配合されます。


■界面活性剤系
(乳化剤)(洗剤)
乳化とは、本来混ざり合わない【水と油】が混ざることを言います。
細菌を包んでいる細胞膜に界面活性剤が触れると、乳化して膜に穴が開くことで菌を死滅させます。

・陰性界面活性剤(陰イオン界面活性剤)
いわゆる洗剤【ラウリル硫酸ナトリウム】(せっけん・シャンプー・ボディソープ)と同じ仲間です。

【ラウロイルサルコシンナトリウム】(LSS)(低濃度では発泡剤として作用)
アミノ酸系の洗浄成分で、歯磨き剤だけでなくボディソープ、化粧品、家庭用洗剤などに広く使われています。

・陽性界面活性剤(陽イオン界面活性剤)
せっけんと逆のイオンになる逆性せっけん(薬用せっけん)です。
【塩化ベンザルコニウム】【塩化アルキルトリメチルアンモニウム】と同じ仲間になります。
界面活性剤の中では最も殺菌作用が強く、皮膚への刺激も強いのが特徴となっています。

【塩化セチルピリジニウム】(CPC)
元々洗濯洗剤として開発されたものです。ブドウ球菌を始めとしたグラム陽性菌に対する強い殺菌作用があり、真菌に対しても殺菌作用を有します。
洗口液やトローチなどにも広く使用される薬品で口腔内の浮遊性細菌や歯垢(バイオフィルム)表層の細菌には効果的です。

【塩化ベンゼトニウム】(BTC)
うがい薬や傷に塗る【マキロン】に入っています。
逆性せっけんとしても使用し、外科手術の前の手指洗浄に使ったりします。
グラム陽性・陰性菌に有効です。

■ビグアナイド系
【クロルヘキシジン】(CHX)
歯医者でよく売られているマウスウォッシュ【コンクールF】に入っています。
グラム陽性・陰性菌に幅広く有効で、殺菌効果は12時間持続するといわれています。
エビデンスもあり、口腔内細菌に対す殺菌力でいえば最強なのではないでしょうか。
ただし効果があるがゆえに、口腔内の善玉菌まで死滅させてしまうため口腔内環境が良くなるかは人それぞれです。
重症な方にはいいかもしれませんが、中程度以下の歯周病の方にはお勧めしません。
また、注意点としては発泡剤との併用は効果を減弱させる作用があります。
そのため、発泡剤入りの歯磨き粉と【コンクールF】を連続して使うことはお勧めしません。

■フェノール系
【イソプロピルメチルフェノール】(IPMP)
非イオン性の薬品であるため、歯垢(バイオフィルム)への浸透性にすぐれており、強い殺菌作用を発揮します。
広範囲の殺菌性を持っており、細菌、カビに対して抗菌作用があります。ニキビケア製品や、制汗剤にも配合され、臭いの元になる皮膚表面の雑菌に効果があります。

【トリクロサン】(TC)
殺菌力が強く、口腔内細菌に効果的ですが、分子が小さいため体内に取り込まれやすくなっています。そのため口腔内や腸内の善玉菌まで殺菌され、腸の炎症による下痢や腹痛の報告があります。

このように、細菌に害があることは人体の粘膜にも害があることが多いです。
前にも言いましたが【薬は毒】です。
【殺菌剤】は細菌だけでなくヒトの体の細胞膜にも影響を与えます。
得るものもあれば、失うものもあります。リスクに応じて本当に必要なものを摂取するようにしましょう。

健康志向の方で、合成洗剤を使わない人がいらっしゃいます。
歯磨き粉でも【発泡剤】は体に良くないと言って【ラウリル硫酸ナトリウム】の入っていないものを探すことはいいことですが、殺菌剤にも【界面活性剤系】のものがあることを知らないと無駄な努力をすることになります。
今はスマホ一つで簡単にネット検索できる時代です。ぜひ、お手元の歯磨き粉の成分を検索してみてください。

●入歯師 山崎 – 公式サイト
https://yamazaki-dp.com/

●やまざき歯科クリニック – 公式サイト
https://yamazakishika.net/

●YouTube【やまシカちゃんねる】
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