労働分配率を考える2024.10.17 税理士法人SHIP 鈴木 克欣

皆さん、こんにちは。
税理士法人SHIP代表の鈴木です。

今回は労働分配率についてお話しします。
現在、そしてこれからの日本の企業において重要な指標が「労働分配率」だと言えます。

労働分配率とは、
企業の限界利益のうち、どれだけが人件費として分配されているかを示す指標です。
労働分配率 = (人件費) ÷ (限界利益) × 100

人件費:給与、賞与、法定福利費、福利厚生費、人材採用費、教育費など
限界利益:売上高から仕入や外注費などの変動費を引いたもの

労働分配率が高いほど、企業が生み出した限界利益のうち、より多くの部分が従業員に還元されていることを意味します。
また、その分、最終利益は少なる傾向があります。

労働分配率が低いほど、企業が生み出した限界利益のうち、従業員に還元された部分は少ないということになります。
また、その分、最終利益は多くなる傾向があります。

・・・では、適正な労働分配率とは何%でしょうか?

一般的には、60%だったり70%だったり様々です。
もちろん、業種によっても異なりますが、今の時代、正解はありません。

言い換えれば、正解がないということが今の時代を反映しているとも言えます。

・・・どういうこと?

例えば、製造業で考えてみます。
中小企業庁の「中小企業実態基本調査」によると、製造業の労働分配率は65%から70%と記載されています。

ある2社の製造業の売上高を1億円とします。
A社の限界利益率(限界利益÷売上高)を30%としたとき、限界利益は3,000万円となります。
B社の限界利益率(限界利益÷売上高)を50%としたとき、限界利益は5,000万円となります。
人件費はA社もB社も2,000万円です。
労働分配率はどうなるでしょうか?

A社の労働分配率:67%(2,000万円÷3,000万円)
B社の労働分配率:40%(2,000万円÷5,000万円)
売上が同じ1億円、人件費も同じ2,000万円だったとしても、
A社とB社の労働分配率はこれだけ変わります。

次は、同じ製造業で売上3億円のC社と売上5,000万円のD社で確認いたします。
C社の限界利益率を10%としたとき、限界利益は3,000万円となります。
D社の限界利益率を70%としたとき、限界利益は3,500万円となります。
人件費はC社もD社も2,000万円です。
労働分配率はどうなるでしょうか?

C社の労働分配率:67%(2,000万円÷3,000万円)
D社の労働分配率:57%(2,000万円÷3,500万円)
労働分配率だけを見ると、C社とD社では、D社の方が最終利益が残っている可能性が高いです。
売上高が3億円と5,000万円と大きな差があるとしても、
労働分配率はその企業によって様々だと言えます。

労働分配率は、低ければ企業に残る最終利益は増加します。
しかし、その労働分配率の目標に無理があれば、退職者が増えてしまい体制を継続することが困難になるかもしれません。

つまり、その企業にとって最適な「労働分配率」があり、常にその労働分配率を追いかけていく姿勢が重要だということになります。

今後、日本は最低賃金が上昇していき、日本人1人あたりの給与も増加していくと予想されます。
つまり、人件費の増加により、労働分配率も上昇していくことになります。
企業にとって適正な労働分配率を維持するには、限界利益も増やしていかなければなりません。

労働分配率を維持することは、従業員のモチベーション向上・優秀な人材の確保・継続した教育投資にも影響します。
人件費を圧縮すれば、利益を確保することは可能となりますが、上記に対する弊害が生まれます。

人件費と限界利益のバランスが労働分配率になります。
自社にとっての正しい労働分配率を把握し、コントロールしていくことでその企業は利益を継続していくことになります。

ぜひ、適正な労働分配率を追いかけてほしいと思います。

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