01 弁護士にもいろいろなタイプがいる2023.3.14 弁護士 山口 智寛
こんにちは、弁護士の山口智寛です。このBLOGでは、主に会社を経営されている方向けに、弁護士の目線から見た経営を強くするための方法や考え方を取り上げています。今回のテーマは、なかなかわかりにくい弁護士ごとの専門分野や特質についてです。
実は、一口に弁護士と言っても、取扱い分野やクライアントの属性等によって様々なタイプが存在します。一つの典型例としては、個人のクライアントに関する離婚、相続、交通事故、借金問題等の個別紛争対応を専門とする弁護士がいます。「町の中の弁護士」という意味で町弁(マチベン)と呼んだりします。このようなタイプの弁護士は、打合せをしたり調査を行ったりして、その内容を元に書面を作成して裁判所や紛争の相手方に提出し、裁判期日において紛争の解決策を模索することを業務の中心としています。
これと対極に位置するのが、大都市圏に所在する大規模事務所や専門特化型の事務所に所属して、上場企業をはじめとする大企業の案件や極めて専門性の高い案件を集中的に対応している弁護士です。このタイプの弁護士は、裁判所に行く頻度はそれほど多くなく、主に契約書の作成や経営事項自体への関与を通じて企業活動をサポートする業務を中心としています。
さて、ここからが本題です。近年、若手から中堅の勢いのある弁護士を中心として、上記の二つのいずれにも属していないニュータイプの弁護士が増えてきています。それは、中小企業を含む法人向けの法律顧問業務を専門的に取り扱う弁護士です。皆さんもあまり意識されていないかと思いますが、会社の経営に関する事柄は、全て会社法を始めとする法律によって規律され、法律に基づいて動かされています。裏を返せば、法律の専⾨家である弁護⼠は、会社経営に⽣かせる知識やノウハウを潤沢に持ち合わせているのです。
ただ、従来は、我々弁護士自身が、どちらかというと紛争が顕在化した後の裁判対応や、大企業における複雑な案件対応といった「わかりやすい」分野の方に意識を向けており、本当の意味でサポートが必要な中小企業へのアウトリーチには必ずしも積極的ではありませんでした。「中小企業の法律顧問業務」と言っても何だか漠然としていて、サービスの提供を受ける企業の側はもちろん、提供する側である弁護士自身が自信を持って売り出すことを躊躇していたのです。
しかし、今や、所在や規模を問わずあらゆる属性の企業が、否が応でも世界規模の競争に面している時代。新しい技術の発展により社会のあらゆるところで膨大な情報が飛び交い、企業は、従来では考えられなかったタイプのリスクに脅かされるようになり、また、社会問題やコンプライアンスにも敏感にならなければ企業活動を維持できないようになってきました。この点、しっかりとした法務部を備えている大企業と異なり、中小企業はあまりにも無力です。このような中小企業の受難の時代において、今こそ持てる力を企業活動のサポートに注ごうと立ち上がったのが、法律顧問業務を専門的に取り扱う弁護士たちです。
私も、上記のようなニュータイプの弁護士です。東京の虎ノ門を拠点にして、全国津々浦々、さらには海外まで、業種や規模を問わず様々な事業者と企業の法律顧問をしています。特別な紛争が無くても、日常的に契約書のチェックや新しいビジネスの相談に応じており、時には商談や金融機関との面談にも立ち合い、企業側が抱いている不安や疑問を即座に解消します。会社の外部にいながらも、言わば、経営者の右腕となる副社長と、大企業の法務部長の役割を兼ねた業務を行っているのです。
さて、法律顧問業務を専門にしている弁護士がどのような存在なのかは、おぼろ気ながらお分かりいただけたかと思います。次回は、中小企業こそが顧問弁護士が必要である理由について取り上げます。