130万円の壁2023.3.17 税理士法人SHIP 鈴木 克欣
皆さん、こんにちは。
税理士法人SHIP代表の鈴木です。
今年も確定申告の時期が終わりました。
ということで、今回は多くの質問をいただく「130万円の壁」についてお話ししたいと思います。
多くのパートさんは、103万円以内や130万円以内で働くように毎年12月になると、働く時間を調整されています。
この部分について、まだまだ勘違いされている方が多いのも事実です。
そして、この仕組みが非常に難しいため、理解するのも困難です。
そもそも、「103万円の壁」や「130万円の壁」とは何でしょうか?
いわゆる「扶養の範囲内で抑える」ために多くの方々は調整してるんだと思います。
・103万円の壁
1年間の給与が103万円を超えると所得税が課税され、扶養控除を受けられなくなります。
たとえば夫婦共働きの場合、奥様がパートで働き年間103万円を超える収入があると、ご主人の「扶養控除」を受けられなくなります。
そして働いている奥様ご自身も所得税や住民税が課税されるようになるため、収入を103万円以内でというのが「103万円の壁」と言われるものです。
まず、奥様の税金ですが、収入が103万円を超えたとしてもいきなり大きな税金が課税されるわけではありません。
問題となるのがご主人の扶養からはずれてしまう点になりますが、こちらも「配偶者特別控除」という制度があります。
奥様の収入が103万円を超えたとしても、201万円までは段階的に控除が用意されているので、ご主人の税金がいきなり増えることはないんです。
つまり、所得税や住民税については、収入に比例して徐々に増加していく仕組みになっています。
また、もう一つの問題点として、ご主人の企業で支給される「家族手当」があります。
日本では約75%の企業が家族手当を支給しており、こちらの相場は月額10,000円から15,000円ほどです。
奥様の収入によって、この家族手当がもらえなくなるのは家計にとって厳しいと言えます。
しかし、多様なライフスタイルの変化によって、家族手当を見直す企業が増えているのも事実です。
現在、共働き夫婦は全体の70%を超えてきています。
しかも、この10年間で急激に増加しています。
奥様の収入がないことを条件に、家族手当を支給することが時代とアンマッチになってきていると言えます。
・130万円の壁
やはり問題となってくるのは「130万円の壁」のようです。
130万円の壁は、社会保険を支払う義務が発生するラインになります。
国会でも議論されていますが、この社会保険が大きな問題となっています。
なぜ、共働き夫婦が増加しているのか?
様々な要因がありますが、ご主人の収入だけで生活していくことが難しい時代になってきていると言えるのではないでしょうか?
子育てや住宅ローン返済のために夫婦2人で収入を得ていくと考えた場合、この「130万円の壁」が立ちはだかります。
奥様の収入が130万円を超えると、これまで支払っていなかった社会保険を支払う義務が生じるためです。
130万円を超えた途端、年間18万円を超える社会保険を支払わなければなりません。
収入129万円ではゼロだった社会保険が、130万円を超えた途端大きな負担となる訳です。
多くの方が130万円を超えないように収入を調整するのも当然です。
さて、この「130万円の壁」が106万円に下がるのをご存知でしょうか?
2016年の法改正により、年収106万円以上の収入がある奥様は社会保険を支払う義務が生じるように変更されました。
2016年のスタート時点では、奥様自身が働く企業の従業員が501人以上とされていたので、
これに該当する方は少ないという状況だったと思います。
しかし、来年2024年10月からは、従業員数51人以上の企業までその幅は拡大されます。
つまり、来年からはご主人と奥様がともに社会保険を支払う共働き世帯が大幅に増加することが予想されます。
・最低賃金は986円
愛知県の最低賃金は986円です。東京や大阪などは1,000円を超えています。
最低賃金の伸び率は、最近10年間で飛躍的に増加しています。
まだまだ最低賃金は上昇していくと予想されるでしょう。
たとえば、時給が1,200円だった場合、年間収入を130万円で抑えるためには1日4時間しか働けなくなります。
平日6時間働いた場合の年間収入は、約190万円。
平日7時間働いた場合の年間収入は、約220万円。
時給が上がることによって、これまでと同じ時間を働いたとしてもこれだけの収入になります。
言い換えれば、106万円や130万円以内で抑えることが難しくなっていくと言えます。
女性活躍の時代と言いながら、いまだに「130万円の壁」を解決できない実態があります。
所得税と同様、段階的に増えていく仕組みに改定すれば、もっと日本の女性も積極的に働くことができるのではないでしょうか?
そして企業です。
法整備が後手後手になっている現状は否定できません。
それだけ、世の中の変化のスピードが加速しているとも言えます。
多くの中小企業は、働き方そのものにオリジナリティを出して独自の働き方を模索していく必要があります。
給与体系も最低賃金に引っ張られるのではなく、時給1,200円、1,300円を実現するにはどうすればいいか?
経営者も我々会計事務所も変化に対応するために、試行錯誤を重ねる必要があります。
働くことや収入を得る「定義」が変わっていくことが、働き方改革の本質ではないでしょうか?
そのためには、もっと貪欲に学ばなければなりません。
多くを学んでいる経営者のもとに、人は集まるんだと思います。