企業デザイン2024.2.15 株式会社クリエイティブアローズ 乳井 俊文
皆さん、こんにちは。SHIPアソシエイトパートナー、株式会社クリイエティブアローズの乳井です。
つい先月、新年を迎えたと思っていたらもう2月ですね。最近の私の特徴的な取り組みとして企業ブランド開発というものがあります。現在、複数社のプロジェクトが同時進行しています。経営者の方々とお会いする機会がとにかく多いのですが、私自身も大きな学びがあったり、刺激を頂きながら伴走しています。今回はそのなかで感じたことをテーマにお伝えしたいと思います。
ギャップ
経営者が自社のブランディングを検討する際、組織の中にある潜在的な課題や、事業自体に何かしら問題を抱えているケースが少なくありません。何かしらの課題感を持っていて、それを好転させるために新たなターニングポイントを作りたい。それで企業ブランディングの刷新に踏み切るというケースが多くあります。そんな状況下で、一般的にはブランディング会社やCIデザイナーに依頼するケースが多いでしょう。新たな企業名を検討したり、デザインをアップデートしたり、コーポレートサイトをリニューアルしたりとやるべき事は多岐に渡ります。しかしここで最近よく聞くことがあります。それは、経営や事業の運営と切り離されたレイヤーで、ブランディングの取り組みが進行してしまうケースです。確かに、ロゴデザインやコーポレートサイトはリニューアルされて新しく、時代にあったものになりました。でもそれは、外見の話であって事業自体の業績や組織力の向上、そして経営者自身が感じている潜在的課題の解決に繋がっていないというのです。
パートナー選びの難しさ
そこで、最近私が複数の経営者からのお話を伺い、ある意味確信していることがあります。それは企業ブランドの開発に携わるパートナーのスキルの問題です。経営や事業戦略・マーケティング領域にもある程度の知見がなければならないと考えています。そのうえで、企業ブランド化に向けたストーリーをロジカルに構築する必要があります。企業の性格や経営者の頭の中を言語化しテーマを開発。デザインのシステムを開発したり、法務的な取り組みをしたりと、取り組みの領域は多岐に渡ります。
頭の中を言語化する
ほとんどの中小企業の場合、その企業の性格は経営者や経営層、一部の幹部社員で生み出されています。この方々の関係値は、他の社員よりも繋がりが強く、例えば創業メンバーや古くから知るメンバーで構成されるケースが少なくありません。そのため、経営者も良く知るメンバーであり、そのメンバーも経営者のことを良く知っています。経営者の持つビジネス哲学や価値意識、どこを見て事業を走らせているのか、好きなこと、嫌いなこと・・・。なので、あえて言語化しなくてもお互いに分かり合えている状態なのです。しかし、この状態では全社員に経営者の考えや事業の行き先を伝える事は出来ません。そこで言語化が重要なのです。
目的と手段を入れ替えない
実は、この言語化という取り組みは非常に奥が深く、難しい取り組みです。ほとんどの場合、経営者の頭の中に意識として存在しています。事業の創業期、成長期の事や未来についてディスカッションを繰り返してまずは全ての要素を洗いざらい抽出します。また、従業員へアンケート調査を実施し、現状の企業内部の状況を分析したり、現在掲げられているスローガンの類や社名・ロゴデザイン等のビジュアル・アイデンティティ等の分析も必要となります。そして、その全てをテーブルのうえに並べて、ストーリーを創っていきます。しかもそのストーリーは経営者が抱える課題を解決し、事業の成長に寄与するものでなければ意味がありません。しかし、残念ながら多くの取り組みが表層的な領域に留まっているのが事実なのです。
言語をデザインする
新たなストーリーが生まれたら、それを「どんな人が」「誰に向けて」「どんなメッセージ」を伝えていくべきなのか?をデザインする必要があります。例えば、社内向きの言葉なのか、社外つまり顧客向けなのか?を検討しデザインしていきます。
マインド・アイデンティティ
|PURPOSE|私たちの存在意義
|MISSION|私たちの使命
|VISION|私たちの在り方
|VALUE|私たちの価値観
↓
ビヘイビア・アイデンティティ
|Credo|私たちの態度や具体的な行動
↓
ビジュアル・アイデンティティ
企業のロゴや商標等を定めたデザインシステム
一番重要なことは、マインド・アイデンティティの整理です。魅力的な言葉でデザインを繰り返し磨き込んでいきます。例えば、長い文章よりは短く簡潔にした方が浸透率は高まるでしょう。また、社員の具体的な行動のデザインも忘れてはいけません。ここまで可視化することで、企業の性格というものがより具体的になってきます。そのうえで、企業ロゴ等の意匠のデザインに着手します。上記の3つの要素が完全にシンクロし、はじめてコーポレート・アイデンティティとして機能します。
プロセスを資産にする
上記の取り組みは、経営者が抱える課題感や、事業成長を阻害する要因からの解放に繋げる必要があります。そのため、取り組みの中に全社員参加のワークショップやミーティングを盛り込むことをお勧めします。そうすることで、プロジェクトの進捗と同等に社員の意識改革等にも繋がります。結果として組織の内側のモチベーションが高まるだけではなく、社員の具体的な行動についても迷いが無くなり、経営者が抱えていた課題の解決がトップダウンとボトムアップの双方から成される企業風土が出来上がります。全社がひとつの価値意識でまとまり、取引先との成功事例や、新規の取り組み等、社内広報活動で積極的に共有する等、組織の活性化もしやすくなります。
今回は、企業ブランディングをテーマに書いてみました。いかがだったでしょうか?最後に、ポイントしてお伝えしたい事があります。それは、「経営者の独りよがりになってはいけない」という事です。多くの社員の共感を獲得できて、しっかり腹落ちするようなプロセスが重要です。そのためにはしっかりと全体をデザインして取り組む必要があるのです。
企業ブランディングは、企業成長のターニングポイントです。興味のある方はSHIPの鈴木先生までご一報ください。
株式会社クリエイティブアローズ
代表取締役 乳井 俊文