壁のハナシ2024.12.11 税理士法人SHIP 鈴木 克欣

皆さん、こんにちは。
税理士法人SHIP代表の鈴木です。

近頃、103万円の壁や106万円の壁、130万円の壁など壁ばかりの話が出てきています。

そもそも、所得税の控除を103万円から178万円に引き上げるという話が発端です。
それだけ控除分が増えることになるので、個人の手取りは増えることになります。

物価は上がっていますし、来年もすでに多数の品目の値上げが予定されています。
決して生活に余裕がない状況で、手取りが少なからず増えるのは良いニュースでしょう。
事実、共働き世帯が70%まで上昇している数字からも、夫婦がともに働いて家計を支えている状況がわかります。

そんな中、新たな壁が登場しました。
106万円の壁です。

実は2024年10月から従業員51人以上の企業で、月額88,000円以上の賃金を受け取っているパートさんは、社会保険に加入しています。つまり、社会保険料を支払っています。
月額88,000円の12ヶ月分が年間で106万円となります。
この106万円の壁を撤廃する、つまり51人未満の企業でも、月額88,000円未満であっても社会保険料を支払うべきだ!・・・というお話です。

なるほど。
さて、ちょっと考えてみましょう。

そもそも、個人の手取りを増やすために所得税の控除分を178万円で引き上げようじゃないか。
そうすれば、なかなか日本人の給与が上がらない現状において、手取りが増えるのはいいことだ!

その代わりに、社会保険料を支払ってもらおう。
いずれ、社会保険料を上げてくつもりだったから、このタイミングがベストだ!
・・・・ん?手取り?
まあ、そのうち誰も言わなくなるんじゃないか?

こんな議論をしてるかどうかわかりませんが、結局はこういう話だと思います。

さらに、パートさんなど全ての人に社会保険を加入させることへの反発を抑えるために、企業負担分を引き上げる話も出てきています。

2024年11月時点で年間企業倒産件数は、2015年以後最大になっており、前年度の同じ月の倒産件数を31か月連続で上回っています。
社会保険料を支払えず滞納がたまり、倒産している企業が圧倒的に多い状況です。
そんな企業の社会保険負担率は50%です。それをさらに上げようとする話し合い。

なるほど。
いったい、誰を見て議論しているのか?
どこを見て議論しているのか?
そう思ってしまいます。

日本人の平均給与は458万円。
賞与2か月分と考えると、1か月の給与は327,000円。
現在の社会保険料は給与の14%。
住民税は10%。
所得税は5-10%。
つまり、約30%-35%である1/3が給与から引かれています。
手取りは、22万円前後になります。

所得税の控除178万円から始まった「手取りを増やす」議論。
この議論を通して、我々はちゃんと考える必要があります。

社会保険や税金が天引きされるのは仕方がない・・・ではないと思います。
世の中の企業は赤字が当たり前だから仕方がない・・・ではないと思います。

赤字だった企業が利益を出せる体質に変われば、給与UPや業績賞与などを支払うことができます。

経営者だけのトップダウン経営ではなかなかな結果を出せないからこそ、従業員も一緒に試行錯誤しながら、ともに学ぶ必要があります。

今まで以上に、従業員の生活を考え経営をする経営者が増えていくはずです。
企業や組織としての「あり方」もどんどん変化していくでしょう。

SHIPのクライアント企業の黒字化率は84%。
この黒字化率がさらに上昇していくことで、クライアント企業の従業員給与を引き上げることに繋がります。
SHIPという組織が存在する理由はここにあります。

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