昭和の時代から、税理士事務所は作業を行うことで「顧問報酬」が成立してきた。
この作業というのは、請求書や領収書を預かり試算表を作成する作業のこと。
言ってみれば、税理士事務所が代行して作業を行う代行業務となる。

例えば毎月の「顧問報酬」が30,000円だとする。
この中身はなんだろうか?ズバリ作業に対する対価である。
税理士事務所の入力スタッフが会計ソフトに仕訳データを入力し、試算表を作成する。
作成した試算表をチェックして、顧問先企業に納品する。
この一連の代行作業に「顧問報酬」として30,000円が請求される。

そして、この代行としての単価が下がってきている。
企業からするとコストなので、コストが下がるのはとてもいい。
税理士事務所側からすると、人間が作業して生じる作業単価が下がるということは
その人間の給与単価は連動して下がっていくことになる。
昭和の時代からのやり方では、令和の時代には生産性は下がり、給与単価も下がり続けていくだろう。

近い将来、この「顧問報酬」が5,000円という時代がやってくる。私はそう思っている。
今でも料金を下げて新規顧問先を増やしている税理士事務所は存在するが、
私のそれは日本全国の相場標準価格が5,000円になるイメージだ。
はたして、その金額でこのビジネスは継続できるだろうか?
おそらく、無理だろう。少なくともスタッフを採用して税理士事務所を運営していくことは不可能だ。
結果的に、税理士先生と家族の1~2人の事務所形態になっていく。
ここに税理士業界から優秀な人材が流出していく未来が見える。

これは、税理士業界に限ったことではなく、クライアント企業でも同様のことがいえる。”人間の体や手を使った作業”に頼った仕事は、これからは”単価”が合わない状況になっていく。あのTOYOTAも同様に、作業ラインを10人から1人に削減するための投資を行っている。どの業界でも”作業”と”単価”の不一致に対するリスクヘッジを行っていくと予想される。

「顧問報酬」の定義を変える時期に来ているという事だ。
これまでの作業単価としての報酬ではなく、会計専門家としての『知識・情報・知恵(わかりやすくアドバイスと呼ぶ)』を提供する報酬としての「顧問報酬」。同じ30,000円の顧問報酬料金だとしても、その内訳は作業としての5,000円とアドバイスに対する25,000円がその内訳となる。

多くの税理士は「そんなことは出来ない」という。税理士の平均年齢が60歳を超えているので、”多く”の税理士は無理だろう。私の父も税理士だが、父が今から仕事の中身を変えていくことが現実的かと言うとそうではない。
しかし、30代や40代の若手税理士やそこで働くスタッフは決して無理ではない。
作業はもちろんゼロにはならない。その作業から付随するアドバイスを行う仕事が中心となるイメージを持ってほしい。

どのコストを削減すればいいか?どうやって資金調達をすればいいか?どことどこの顧問先企業をマッチングすればお互いにメリットがあるか?どうすれば売上が上がるか?どうすれば黒字になるか?
多くの中小企業がこれらの悩みに会計のプロとしてのアドバイスを待っている。そこに市場がある。そこに付加価値が存在する。つまり、そこに仕事が存在し対価が生じるということだ。

いま、そのアドバイスができないのであれば、これからの2年間でどういう時間の使い方をしていけば出来るようになるか?何を学べばアドバイスができる会計専門家になれるか?
”無理”ではなく、自分の未来を自分で考え自分に投資をすべきだと思う。作業に差別化を図るのではなく、自分のなかにある知識や知恵が必要とされるのであれば、知識と知恵を頭に入れればいい。”学ぶ”という事。学ぶ時間はまだある。しかし、2年後はわからない。

中小企業であっても経営者は経営のプロを目指していく時代。
我々、会計専門家は会計のプロを目指し、会計のプロしての「顧問報酬」をいただく時代になる。