こんにちは、小川です。
今回は、金融機関目線のお話を。

よく、「銀行は晴れている時に傘を差し出してきて、雨が降っている時には傘を引っ込める」なんて言われますよね。これは、経営状況が好調な時に「お金を借りてください」と言ってきて、経営状況が苦しいときに融資を頼んでも断られる、といったことだと思います。ただ、本当にこんなお金の貸し方をしていたら金融機関の経営は成り立ちませんが(笑)。前者だと事業者にお金を借りてもらうのを断られるのが大半で、後者では自ら断るということですよね、これだと融資する先がないということになってしまうじゃないですか(笑)。
なので、実際はそんなことありません。だって、見る角度を変えると融資しているのは金融機関ではありませんので。
なぜ、融資しているのが金融機関ではないのか。私がかつて在籍していた地域金融機関に絞って言うとそれが成り立ちます。地域金融機関は地域の方からお金を預けてもらって(預金)、それを資金が必要な地域の方に貸し出す(融資)というビジネスモデルだからです。なので、資金の出し手は実は預金をしている地域の方で、金融機関はその仲立ちをしているだけ、ということになります(上場している銀行は、いわゆる「市場」から資金調達してきているので一概にそうとは言えません)。
そのため、融資金は確実に返済してもらう必要があるわけです。預けてもらった預金を毀損させるわけにはいかないので。
例えば、ある日、ATMで10万円預金の引き出しをしようとしたら、9万円しか出てこなかったとします(機械の故障でもなく残高不足でもない)。金融機関担当者に理由を聞くと「いやあ最近倒産が多くって融資金の焦げ付きが多いんですよ。なので、貸したお金が戻ってこないので、資金の出し手である預金者の方に応分の負担をしてもらっています。なので、今は9割しか預金払い戻しできません」なんて言われたとします(あくまで例えばですので、実際はこんなことありません)。
こんな状態になったらどう思います?「何をやってんだ銀行は!」「ちゃんと返してもらえよ!」「借りたやつもちゃんと返せよ!」って思いますよね!?
そんなことがないように、きちんとした融資審査があって、返済してもらえる可能性が高い方=一定の信用力がある方、に融資をするわけです。地域の方の預金を減らしてしまうわけにはいかないので。なので、必然的に業績の好調な企業は借りやすく、業績不振の企業は借りにくい、だから、冒頭のような表現をされてしまうわけです。
ただ、そんな単純なことで融資しているわけではないことも事実です。たとえ足元の業績が良くなくてもこの企業が社会に地域に必要であり、トータルで見た“信用力”があると判断できれば、融資するわけです。そこで、この信用力とは何かということになってくる。それは常日頃からの金融機関との“信頼関係”です。企業情報をオープンにして、自社のビジネスモデルを語らい、自社のことをわかってもらえる努力をしている、企業の信用力は高いです。業績がいいからといって、約束は破る、上から目線で応対する、担当者レベルの人間を相手にしない、経営データはおろか試算表や決算書も出し渋る、といった企業が窮地に陥っても、それまでの“信用力”がないので、傘を差しだそうと思いません。
このようなことを考えていると、かつて金融機関在籍時の上司から教えられ、自分も大変共感した言葉が思い起こされます。
「融資はどこまでいっても最後は人だよ。経営者の資質。この社長は信用できると思えば融資するし、信用できないと思えば断る。」
金融機関といっても、仕事をしているのは「人」です。地元の企業を応援したい、苦境に陥っていてもなんとかサポートしたい、そんな風に考えている金融機関の方は多いです。ただ、信用力が問題となってくる。普段ちっとも連絡とれないのに、困った時だけ向こうから連絡してくる・・・。こんな人に積極的にお金を貸したいとは思わないですよね。
自分も経験があります。融資担当をしている時に、普段なかなか連絡の取れない社長さんが突然融資窓口に来られ、「運転資金を借りたい」。いつまでに必要ですか、と聞くと「明日、できれば今日」。この時点で信用力に疑問符が付きますし、逆の立場で考えれば希望日までに融資が下りるどうか想像に難くないと思います。もう一段階突っ込んで言ってしまえば、金融機関は「資金を必要としている方に適切に融資する」のであって、それは「困っている方ならだれでも融資する」と同義ではないということです。
なので、十把一絡げに「銀行は晴れている時に傘を差しだしてきて、雨が降っている時には傘を引っ込める」と言っている方を見ると、自分は違和感を覚えます。雨が降っている時にどうやって傘を差しだすのか、が金融機関の真骨頂です。そのためには、お互いの信用力を高めておく必要があるのです。金融機関も企業側もお互いのことをよく知る努力を常日頃から取り組んでいるか、よく“対話”をしているのか、その差が困った時に歴然と現れます。

経営者の重要任務である「資金繰り」。これを円滑に進めるためにも、経営者の皆さん、また、金融機関の皆さん、常日頃から“対話”をしましょう。雨が降っていても傘を差しだせる、差し出せてもらえる、状況を作っておきましょう。お互いの事業の継続・発展のために。